広島のすぅちゃん

BABYMETAL中元すず香の軌跡をたどる

 

1560 LEGEND "1999" NHKホール 中編 止まない雨

(この記事は前回の記事からの続きです)


 突如客電が点き、ざわめく会場
 いったいどうしたのか?
 ザーザーという音とオペラ調の歌声が会場に流れ始めると同時にアナウンスが

 「ただいまより休憩に入ります」

 ええええ!!
 なんとBABYMETALのライブで休憩時間w

 ライブ時間の短いBABYMETALでなんとも意外な展開であり、紙芝居をやった直後で期待も高まってきたところだっただけに観客も肩すかし状態
 これにはさくら学院のメンバーたちがいた関係者席からも大爆笑の声が聞こえてきたという

この展開には関係者席にいたアイドルの卵(?)の女の子達も大爆笑。
確かにこんなLIVEは見たことが無いΣ(・ω・ノ)ノ!
 引用:http://secretdesire.blog14.fc2.com/blog-entry-2725.html


 ちなみにこの日はこんなメンバーが来ていた模様

  さくら学院のみならず武藤彩未・島ゆいか・三吉彩花・金井美樹という花のアミューズキッズ96年組も。島さんが来ていたということで可憐Girl'sそろい踏み!と一部で話題になったようです。


 ライブに戻りますと
 休憩時間の合間、会場には謎のオペラ調の歌声が流れ続け、時折ギターのチューニング音が聞こえてきたとのこと。
 これはバンドセットへ転換をしているのか?
 それにしても長いな、、、
 会場のざわめきは続き、なんと10分以上ライブが中断される

 中断から12,13分ほど経過した頃、「ブー!」
 ホール会場ならではのブザー音が鳴り、客電が落ちて紙芝居が始まる
 

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 雨が降り注ぐイラストとともに美しいピアノの旋律が流れる
「タンタン・タ♪タンタン・タ♪タンタン・タ♪」
(この美しいピアノBGMは4年後に広島の地でも奏でられることになります)

その昔 神の怒りは強大な嵐となって大洪水を巻き起こし
この世の全てを洗い流した
だが 止まない雨は無い

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やがて嵐は過ぎ去り クリスタルに輝くまばゆい光に導かれ
「メタルの方舟」はEL・DO・RA・DOへと辿り着く

 ここでステージに神バンドが登場し、歓声が上がる。

「メタルの神々」そして「紅の騎士」と「クリスタル」が奏でるハーモニーは
失われた魂の鼓動を呼び起こすのであった


 タラリララーン♪ タリララーン♪
 バイオリンの音色が聞こえるとともにステージに朧げに浮かびあがるクリスタルピアノ

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 ステージ上部には中元すず香がひとり
 ピアノ音だけをバックに静かに歌い出す

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 「ど~して 眠れないの」
 「ど~して 夜は終わるの」

 ん?聞いたことないな。またなにかのカバー曲だろうか?

 ワンフレーズ終わるとどでかいエレキギターが演奏に加わる

 「だれも~ 知らない~ ほんと~は ただー」

 んん?なんかどっかで聞いたことあるようなギターの音色だな。なんのカバーだろ?

今度はSU-METALソロでのバラード曲。これも何かのカバー曲とか?と必死に聞き耳たててみるも、よう分からず
 引用:https://blog.goo.ne.jp/krischprog/e/f5dc6aadeb3a2a05ab4b6e976d3683de

 YUIMETAL、MOAMETALのカバー曲披露後のSU-METALソロだったため、またカバー曲が来たのだろうと一生懸命耳を傾けた観客が多かったようです

 「ぜーつぼ~ さーえーもー ひ~かりーに なるぅ」
 ステージが明るくなりバンドの全貌があらわになる 

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 ステージには驚きの光景が
 ステージ転換前はしっかり立っていたギリシャ風の柱が全て折れていた

(休憩前)

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(休憩後)

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 凄まじい嵐に襲われたあとなのか、ステージには朽ち果ててしまった柱たちが。

 中元すず香が歌い続ける。
「やまない あめーが ふりつづいてもー」

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「ゆーめーがー つづくー なら~ さめなーいでー」

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 すると蝋人形になってしまったかわいい二体が登場

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 SU-METALが2人にかかった魔法を解く

f:id:pierofw:20190131172816j:plain出典:https://okmusic.jp/news/image/39437250


 2人はそのままクリスタルピアノへ
 復活したゆいもあの伴奏の横で中元すず香が歌い上げる

f:id:pierofw:20190131172946j:plain出典:https://natalie.mu/music/news/94183


 こうしてバラード調の曲を披露した中元すず香だが、セットリストを伝えるのちの報道でも「新曲」としか書かれておらず、曲名は明かされなかった。

【最も早くセトリを伝えたmFound】

■「LEGEND “1999” YUIMETAL & MOAMETAL 聖誕祭」セットリスト
(2013.6.30 NHKホール)

1. BABYMETAL DEATH
2. いいね!
3. 君とアニメが見たい
4. ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
5. ちょこっと LOVE -BIG TIME CHANGES ver.-
6. LOVE マシーン -FROM HELL WITH LOVE ver.-
7. おねだり大作戦
8. 新曲
9. Catch me if you can
10. ド・キ・ド・キ☆モーニング
11. メギツネ
12. イジメ、ダメ、ゼッタイ
-ENCORE-
13. 紅月-アカツキ-
14. ヘドバンギャー!!

 引用:http://mfound.jp/news/sp/e/019454.html

 この報道により、曲名こそ不明だったがカバー曲ではなくオリジナル曲だということは判明。
 この曲は、武道館で再度披露されたがその後封印されてしまい、もう演奏されることはないのかなと思われたなか、2016年4月発売の2ndアルバムに収録されるという運命をたどる。
 この曲について中元すず香はこのように語っている。

ーーーこのアルバムでものすごくいいなと思うのが、"NO RAIN,NO RAINBOW"。何が素晴らしいのかというと、SU-METALが歌うことでばっちり意味がわかる曲だと思うからなんですね
「(笑)はい」
(中略)
「この曲は1stが出るちょっと前ぐらいにできていた曲なので、1stに入っていてもおかしくないんですよ。でも、初めて歌ったバラードっていうこともあったし、私も正直最初は本当に意味がわかりにくくて、とりあえずメロディを追っていればというか、歌詞を間違えなければみたいな感覚でライヴもやっていて。この曲がもし1stに入っていたらそんなに響くものでもなかったのかなっていう印象があるんですよ。ライヴを重ねていって、2年経った今だからこそ歌える曲っていうか。この曲を聴いてライヴ中に泣いている人がいるのを見て、こういう曲って人に感動を与えるんだなって自分で実感したこともあって。だから今回のアルバムに入って良かったなっていう思いが自分の中にありますね」
 2016年5月30日発売ROCKIN'ON JAPAN vol.469より

 「ライヴ中に泣いている人がいるのを見て」
 紅月のときもそうでしたが、ほんとすぅちゃんて観客の様子をよく見ているんですね・・・
 このインタビューは2016年初頭なので、このときまでに「NO RAIN,NO RAINBOW」を歌ったのはNHKホールと武道館のみ。なんとなく武道館での出来事ではないかと思うのですが、もしかしたらNHKホールで涙した観客もいたかもしれません。

「この"NO RAIN,NO RAINBOW"も、歌詞をちゃんと伝えようって思うようになりましたね。今までは音程をちゃんととるとかここで伸ばすとか歌詞を間違えないとか、基本的なところをちゃんとやろうっていう意識のほうが強かったんですけど。それよりも大切なことがあるなって思って。特に歌詞をちゃんと伝えたりとか音楽を楽しんだりとか、自分の気持ちを優先してやることが増えましたね。そうすることによってお客さんの反応が見えるので。今までは自分の世界にこもってとりあえず歌を伝えなきゃっていういほうが近かったんですけど、ちょっとだけ心を開いてお客さんの意見を入れながら歌う。それがライヴなんだなって気づいたので。」
 2016年5月30日発売ROCKIN'ON JAPAN vol.469より

 はじめは音程をとるなど歌の基本的なところで精一杯だったすぅちゃんですが「歌詞をちゃんと伝えよう」とかわっていったとのこと。
 こういう姿を見ても、中元すず香の歌の進化はお客さんのリアクションも大きな要素だったことがわかります。この新曲は自分自身でも「正直最初は本当に意味がわかりにく」い歌だったが、泣いている観客を目にして、実は「こういう曲って人に感動を与える」ということに気づいたと。観客の反応を見ながら歌に新たな意味を見出していくんですね・・・
 「お客さんの意見を入れながら歌う」と言っているように、BABYMETALのそして中元すず香の歌は観客のパワーすらをも包み込んで大きくなっていく。

 

 ところで、このインタビューでは「初めて歌ったバラード」とも言っています。
 BABYMETALでは初めてのバラード曲ですが、ロックバンドがやるこういう曲のことを音楽業界ではパワー・バラードなどと呼ぶそうです。
 この曲は演出にクリスタルピアノやコルセットがでてきたことや雨というキーワード、ピアノ音がふんだんに使われていることなどからX JAPANオマージュとも言われているそうですが、これについてKOBAMETALはこんなことを言っています。

ーーー曲名が「NO RAIN,NO RAINBOW」だし、楽曲自体も匂いまくっているので・・・すばりX JAPANでいうところ「Endless Rain」的な感じではありますよね?
KOBAMETAL 本当は楽曲的にはビリー・ジョエルだったんですよ。
ーーーえええ!(笑)
KOBAMETAL 「オネスティ」を聴きながら「こういうのがいいね」って言ってたんですよ(笑)。
ーーーまさかのビリー・ジョエル「オネスティ」!
KOBAMETAL あとAOR的な人たちの曲も聴いていて。急にサビでマイナーコードになるみたいな(笑)。いろいろ話しながら作っていた曲ですね。いろいろなものが混ざってはいます。
 2016年4月17日発売ヘドバンvol.10より


 一方、元メガデスのギタリストであるマーティ・フリードマンはこのように述べている。

外国人がこれを聴いたら、凄く新鮮に感じます。J-POPへの素敵な入り口だと思いますね。メロディーが東洋的で切ない。解釈がデカいですね。アイドルっぽいとは言えないですけど、J-POPとは絶対言えます。(中略)コード進行は邦楽に当たり前の感じですが、洋楽にはないですね。
 2016年4月10日発売ヤングギターvol.692より

 この曲を我々日本人が聴くと「どこかで聞いたことあるな」と感じることや初めて聴いたお客さんがカバー曲かな?と思った状況を実によく表してくれている言葉だと思います。
 しかし意外や意外、このコード進行は洋楽にはないもので、西洋のミュージシャンが聴くと新鮮に感じると。
 この曲はこれまで日本のライブでしかプレイされていないが、海外でやれば意外と「日本的なもの」としてウケるかもしれない。


 さて、BABYMETALとしては初めてにしてここが唯一の?休憩時間が挟まれたライブでしたが、この休憩時間は、「ゼウスの妨害による「空白の時間」」だったそうです(笑)

 

(つづく)


☆本公演は映像化されています 

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